Bar Zirconia

Livly Layout Laboratory

Our story

当島のホム・リヴリーの誕生の物語です

其れは七月某日、紺色の宵闇に蒼い星が綺羅と光る夜のこと、或る落ちこぼれのリヴリー研究員がいつになく独りぼっちの気分でおりました。なにせ研究は日々失敗ばかり、大事な人とも喧嘩をしてしまい、すっかり元気を失くしていたのです。

そのひとはどうしようもない気持ちを抱えたまま、ふと何気なしに、つい先ほど外したばかりで机の上に転がっていたジルコニアのイヤリングを一揃い、手許のグラスの中にポツンと落としました(意味も目的も持たないごく無意識の所作でした)。二粒の偽造ダイヤモンドが飲みかけのトニックウォーターに沈んだその瞬間、ぱん!と火花が閃き、はずみでグラスはリィィンと鳴りました。突然の光と音に驚いたそのひとが、咄嗟に閉じてしまった目をそっと開くと、倒れたグラスからふたりの小人が這い出すところでした。

ふたりは、自分たちがどういう状態なのかまるでわからないといった具合にぼうと座り込んでいましたが、研究員がおそるおそる指先で触れると[/connect]それまでぼんやりしていたふたりの目はきらきらと煌めき、すくと立って机の上を駆け回りはじめました。それと同時に研究員自身、それまでの哀しさも淋しさもどこへやら、あたたかくて少しわくわくするような心持ちになり、これから自分が何をすればいいのかが啓けた気がしました(いつも失敗ばかりの研究員にも、それが「通心」と呼ばれる状態だと直ぐにわかりました)。

そのひとは研究室に在ったすべてのフラスコを集め、片端からエリキシルを注ぎ込み、そこにリキュールやフルーツシロップを加えて、色々なカクテルを拵えました。そしてそのひとつひとつに、とりどりの宝石を一粒ずつ放り込んでいったのです。青いお酒に蒼い石、赤いお酒に紅い石・・・

ピッ!
キュピ!
パフ!

フラスコは次々に輝き、リィリィと楽しげに反響し、中から色とりどりのリヴリーたちが飛び出しました!研究員はそのひとりひとりに、彼らの生まれる基となった宝石の名前をつけました。名前をもらったリヴリーたちは、意味を知ってか知らずか満足げに首を振りながら、横倒しのフラスコに飛びついたり、育成中のアルケミカルツリーにのぼったり、自由気ままに遊びはじめました。

たちまち賑やかになった研究室には、カーテンの隙間から金色の朝陽が射し込んでおりました。なにかとても面白いことがはじまったのだという確信とともに研究員は窓を開けました。外の世界を充たしていた水色の空気がすぅと流れ込み、カーテンはふわりと膨らみました、そのとき誰かがとても小さな声で『ただいま』というのを聞きました。訝しげに振り返った研究員でしたが、生まれたてのホムがふたり、こちらを見て笑っているだけでした。その声はとても懐かしく、無性に胸が苦しくなったのですが、一体それが誰の声だったのかさっぱり思い出せないのでした。

fin.

懐かしくも愛おしい君たちとの再会に捧ぐ
2021.07.15 ジルコーニャ